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「深月はさ、すぐに私を疑う。『嫌いになりましたか?』『信じてくれますか?』って。私はこんなに深月が好きでたまらないのに、深月はその気持ち、すぐに疑うよな? これでもすげぇ傷ついてるんだけど?」
「ご、ごめんなさい……! 僕、そんなつもりじゃ、なくて……将継さんの気分を害すること言ってないか、不安になるんです」
言ったら、将継さんは僕の手をギュッと握りしめて、耳元で噛んで含めるように言葉を紡ぎ始めた。
「深月にはさ、私の好きはちゃんと伝わってるか? すぐ遠慮したり自信失くしたりされたら、私の気持ちは届いてないんじゃないかって不安になんだ」
僕は、こんなに将継さんが好きで、だから嫌われたくなくて不安になってしまうのに、それが将継さんを不安にしていただなんて思わなくてびっくりしてしまう。
「将継さん……ごめんなさい。僕……そんなつもりじゃ……」
「だからそれが駄目。謝らない。私は深月に何を言われても気分を害することなんかないぞ? もっと、言いたいこと何でも言ってくれないか? 私を信じて欲しい。いま何かして欲しいことあるか?」
「――して」
「ん?」
「ギュってして」
すぐに腕を引き寄せられて温かい腕の中に包み込まれ、互いの心音が重なるだけで途方もない安心感に満たされる。
先程感じた距離が一気に縮まって、将継さんがすぐそばにいるのだと、まなじりが滲む。
将継さんは僕の目尻を指で拭って、「さっき、相良に何て言われたんだっけ?」と揶揄いながら僕を抱きしめる腕に力を込めた。
「強くなります……将継さんの、ために……」
「これから、義父とおふくろさんに何があっても強いままの深月でいられるか? 義父はともかく、おふくろさんと離れることになっても」
「もう、決めました。僕の居場所は……将継さんのそばだけだって。将継さんが、嫌って言うまで、離れません」
「じゃあ死ぬまで一緒だな?」
その言葉は僕の中にストンと収まって、「死ぬまで、そばにおいてください」だなんて、自分でも驚くくらい無遠慮なことを口走れていて。
その時の将継さんの嬉しそうな顔を、僕は一生忘れないだろうと思った。
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