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61.狡猾な男?【Side:長谷川 将継】
深月の希望で海を見ながらドライブしようと話しているときのことだった。
久留米と思しき男からデジタルな音声の、死ぬほど気持ちの悪い電話がかかってきたのは。
どう聴いてもあの男が私たちのことを見ていたとしか思えない内容のオンパレードに、私だってゾッとしたのだ。
内容が内容だっただけに深月が心配になった私はすぐさま彼を気遣ったのだが、ショックが大き過ぎたんだろうか? 電話を受けた直後から深月はうまく喋れなくなってしまった。
ここまで警戒されていては声紋認証などに掛けることは叶わない。
だが録音データを相良にも聴いてもらって、正しい情報を共有するのには十分使えるはずだ。
そういう意味では有用なデータなのだが、深月にアレをもう一度聴かせるようなことは、間違ってもあってはいけない。
そう考えた私は、件の録音データを一旦自分のスマートフォンに転送して、深月の携帯からは完全に削除した。
その上で深月に再度聴かせなくて済むようワイヤレスイヤホンを接続して相良にも聴いてもらったのだが、聴き終えるなり彼は形のよい眉をひそめて、心底悔しそうに舌打ちをしたのだ。
そりゃぁそうだ。
こんなに久留米にアレコレ言われるぐらい近い位置を陣取られながら、ヤツは相良の張り巡らせた網に毛の先ほども引っ掛からなかったのだから。
相良としては腹立たしいこと極まりないだろう。
かくいう私も、相良と彼の組の人間たちの優秀さを知っているだけに、久留米の狡猾さには溜め息しか出なかったのだ。
真剣な話、久留米はどうやって葛西組の監視の目を掻い潜ったのだろう?
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