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相良に任せておけば何もかもうまくいく。知らず知らずのうちに、自分の中にそんな思いがあったんだと思う。正直、今回のことは、想像以上に堪えた。
だからだろうか。
相良の息が掛った病院で深月が心因性の失声症と診断されたとき、私は自分が深月のそばへ居ることに、初めて不安を覚えてしまった。
何せ葛西組の包囲網さえ突破してしまう男が相手なのだ。
深月の畏れたるや相当なものに違いない。
私にしても、深月を守ると言っておきながら、この体たらく。
きっと深月は、私に何か起こる未来を恐れているんだろうが、私は私で深月が久留米にあの手この手で次々に傷付けられているのを見せつけられているのがことのほか辛かった。
――私は本当に深月を守り切れるんだろうか?
考えてみれば、私と出会わなければ、深月はこんなに酷い目に遭わなくて済んだはずなのだ。
少なくとも私と出会う前の〝先生〟とやらは深月にとっていいカウンセラーのようだったし、深月自身もヤツのことを慕っていた。
そう。深月は私と出会ったばかりの頃、確かに久留米へ想いを寄せていたのだ。
きっと、久留米の方もそれが分かっていたから、のんびり深月との距離を詰めていけばいいと思っていたに違いない。
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