61.狡猾な男?【Side:長谷川 将継】

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 何より深月(みづき)は性的虐待を受けての勃起不全(ED)で、久留米(くるめ)からカウンセリングを受けていたという話だったし、その辺りを慎重に進めねばならない……と誰よりも考えていたのはヤツ自身だったはずだ。  そこへポッと出の私が割り込む形で、深月の心を()(さら)ってしまったから。久留米としては(はらわた)が煮え繰り返るような心地がしたことだろう。  どう考えてもヤツと深月の均衡(きんこう)を崩したのは、他でもない私なのだ。 (私に出会わなければ良かったのか?)  実際には起きたことをなかったことには出来ないし、こうなってしまった以上、久留米は元のには戻れない。  今更、深月から手を離すことのほうがよっぽど悪手だと頭では分かっているくせに、(ろく)でもない「たられば」ばかり考えてしまうのは、私自身相当弱っているのだろうか。  何より、自分をダシに深月が(おど)されてしまうことが、辛抱ならないし、深月が今現在も声を失ったりと不便な思いを強いられていることもたまらなく辛いのだ。 「許せねぇ……をダシに深月を辛い目にばかり遭わせやがって……。が一緒にいるせいか……? 自分が許せねぇよ……深月にストレスかけてばかりじゃねぇか……」
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