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深月への言いようのない罪悪感と、相良がそばに居てくれるという甘えからだろう。
感情のままに思わずそんな弱音を吐き捨てたら、深月が私の服を掴んで辿々しい口振りで首を振る。そうしながら、ほろほろと泣きながら私の弱さを否定してくれるのだ。
この期に及んでさらに深月へ心配を掛けて、こんな顔までさせてしまうとか……。私は一体何がしたいんだ!
――すまん、深月。今のは言葉の綾だ。本心じゃない。
そう続けようとして、私は部屋の片隅に置かれた深月の鞄を見て、ハッとして口をつぐんだ。
(もしかして――)
あることに思い至った私は、深月に仕草でシーッとしてみせると、相良に深月の鞄へと目配せをする。
そうだ。普通に考えて、葛西組の監視の目をすり抜けて久留米が私たちの傍に来られること自体おかしいじゃないか。
うちのポストへ変なモノが投函されてからはさらに警戒の目を強めてもらっているのだから尚更――。
(何故そんな簡単なことに気付けなかったんだ、私は)
急に静かになったことを不審に思われないよう「泣かせてごめん。けど……」と深月に語りかけながら、私はスマートフォンを取り出して素早く文字を打ち込んだ。
『もしかして……久留米に音、拾われてるんじゃないか?』
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