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あの録音テープに吹き込まれていた文言が、もしも久留米が「見た」ものではなく、「聴いた」ものだとしたら。
それならば、葛西組の面々の視線をものともせず、久留米が私たちの動向を知っていたことにも納得がいくし、辻褄が合う。
私の推測に相良はすぐにピンと来てくれたらしい。
「なぁ、そんなに結論を急ぐことないだろ、長谷川。んな弱音吐いて深月ちゃん泣かせて……そっちんが男としてダメだろ」
私のスマホを見て、小さく頷くと、そんな他愛のない会話で場を繋げながら、私同様スマホで言葉を打ち込んでくる。
『だとしたら深月ちゃんが失声症になってることも久留米に知られてるってことだよな?』
相良の打ち込んだメッセージを見て深月も私の横で息を呑んだのが分かった。
そうだ。
それを知られたら、そのこともヤツから新たな脅しのネタにされるかも知れないと、相良は言わなかったか?
私たちの言動を逐一聴きながら、見えない場所で久留米がニヤリと笑った気がした――。
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