61.狡猾な男?【Side:長谷川 将継】

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 あの録音テープに吹き込まれていた文言が、もしも久留米(くるめ)が「見た」ものではなく、「聴いた」ものだとしたら。  それならば、葛西組(かさいぐみ)の面々の視線をものともせず、久留米が私たちの動向を知っていたことにも納得がいくし、辻褄(つじつま)が合う。  私の推測に相良(さがら)はすぐにピンと来てくれたらしい。 「なぁ、そんなに結論を急ぐことないだろ、長谷川(はせがわ)。んな弱音吐いて深月(みづき)ちゃん泣かせて……そっちんが男としてダメだろ」  私のスマホを見て、小さく(うなず)くと、そんな他愛のない会話で場を繋げながら、私同様スマホで言葉を打ち込んでくる。 『だとしたら深月ちゃんが失声症になってることも久留米に知られてるってことだよな?』  相良の打ち込んだメッセージを見て深月も私の横で息を呑んだのが分かった。  そうだ。  それを知られたら、そのこともヤツから新たな(おど)しのネタにされるかも知れないと、相良は言わなかったか?  私たちの言動を逐一(ちくいち)聴きながら、見えない場所で久留米がニヤリと笑った気がした――。
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