62.奇襲【Side:十六夜 深月】

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***  家事をしたりしていても、スマートフォンに将継さんから定期的に安否確認のメッセージが届くから。逐一返信をしてやりとりをしたりしていると、時間はあっという間に過ぎた。  これで僕が夕飯を作って待てたらいいのだけれど、それは出来そうにもないので肩を落としていると、時刻は既に十九時を過ぎている。 (将継さん、そろそろ帰ってくるかな)  そう思っていたら玄関が開く気配がして、僕は急いで出迎えに向かった。玄関先、嬉しくて扉を閉める間もなく将継さんにギュッと抱きつく。 「深月、ただいま。いま警備の奴ら帰って行ったから。夜は静かに過ごそうな?」 (昼間は騒々しかったけど、夜は将継さんと二人っきりだ)  僕は嬉しくて将継さんに抱きついたままコクコクと頷いて、一生懸命口を開く。 「ま、……さ、お……かえ……な、さ……」  たどたどしく『おかえりなさい』を告げると、将継さんは僕にただいまのキスをくれるから、幸せを享受した。  瞬間――。    将継さんが「ぐっ」と(うめ)き声をあげて僕にもたれかかってくるので、びっくりして「ま……ぐ!?」と声を掛けるけれど、彼はそのまま土間にくずおれてしまう。  将継さんが買い物してきた物が土間にバラバラと散らばるのを呆然と見つめて、視線を上げると――。  彼の背後には、革手袋をしてバールのようなものをぶらさげている先生が立っていた。 「深月くん、こんばんは。やぁーっと近付けた」
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