64.最初に好きって言うんだった【Side:十六夜 深月】

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 下半身をひん剥かれた状態で、先生は下肢の狭間で萎びたままの僕の性器を、手のひらでギュッと痛いくらいに握りこんできた。 「っ……う」  そのまま力任せ。  何か狂気に支配されているかのように力を込めて擦り続けられるけれど、僕のそれはまったく反応を示さない。 「許さないよ? あの男だけだなんて絶対に許さない。深月(みづき)くんは僕のものだ……」  反応しないままのそれを激しく擦られ続けていると、次第に摩擦による痛みに襲われ始め、何か生温い液体が(したた)ったのがわかった。  もしや反応を示して露が溢れたんだろうか?と視線を転じると、こぼれていたのは血液だった。強引に爪を立てて擦られているせいで先端が傷付いたらしい。 「い……た、っ……せん……せ……」 「ああ……傷付いちゃったね。でも、僕で()つまで何度でも繰り返すよ? 時間はたっぷりある。今日はもうお眠り?」  先生が血液に汚れた手のひらで僕のは頬を撫でて妖艶に瞳を(すが)める。僕は熱を持て余した身体と頭が苦しくてギュッと身体を丸め込んだ。  扱かれ続けた下肢がひりひりと痛くて、身体の熱も治まらなくて、『時間はたっぷりある』という言葉にも絶望感を覚える。 (将継(まさつぐ)さん……助けて……)  先生は静かにベッドから降りて、再び注射器を取り出して僕の腕に刺し込む。今度はまた眠らされる薬だろう、意識が朧気になっていく。  煌々と灯された照明を消して部屋を出ていく先生の気配を、霧散していく頭が認識した。  眠い、それ以上に身体が熱い。  この身体の熱を解放してもらえるのは将継さんだけだろう。  けれど、将継さんは無事だろうか。  自分のこんな状況よりも、あの後、将継さんがどうなってしまったのか……。  無事に彼が目覚めていたとしたら、また僕は心配を掛けてしまっているだろう。それが酷く心苦しくて、半ば開けられなくなっている瞳から涙がこぼれる。  将継さんは、僕と出会わなければ辛い目に遭わせずに済んだと言っていたけれど、僕の方こそ彼と出会わなければこんなお荷物になることもなかった。 (将継さん……迷惑ばかりかけてごめんなさい……)     熱い身体を解放できないまま、僕は強制的な眠りの淵に(いざな)われていった。
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