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65.頼りにしてる【Side:長谷川 将継】
頭が酷く痛い――。
だけど、そんなのは深月が無事かどうかに比べたら些末なことだ。
カーテン越しの窓の外はぼんやりと薄暗くて、夜なのか朝なのかさえ分からない。時間の感覚が不明瞭だから、深月と離れてどのくらい経ったのか皆目見当がつかなくて、余計に心がざわついた。
私はベッドへ腰掛けるなり、逸る気持ちに押されるまま相良に話を促したのだが、相良は私が寝そべるまで何も言うつもりはないと言い切った。
深月がどういう状況か分からないのに身体を休めろと指示されても納得がいかない。
でも、そんな風にごねたところで冷ややかに睨まれるだけで――。
こういう時の相良がテコでも動かないのは、長い付き合いで知っている。
渋々相良の言う通りベッドへ身体を預けると、私はリクライニングで少しだけ上半身を起こして「これでいいだろ? で、深月は?」と彼を急かした。
なのに――。
「とりあえずはお前の現状からだ」
相良は深月の話より先に私の怪我の状態について説明をすると言う。
正直自分のことなんてどうでもいいと言い張ったのだが、そこを説明してからでないと深月のことは一切話すつもりはないと相良が断言するから、私はしぶしぶ頷いた。
「――お待たせしました。先生、頼んます」
私が首肯したのを見届けるなり、相良が出入り口へ向かって声を張って。それを合図にしたみたいにノックの音が聞こえて、すぐさま病室の扉が開いた。
個室になった室内へ、あまりにタイミングよく医者が入室して来たところをみると、恐らくは私が目覚めてすぐ、相良が外へ控えている配下へ主治医を呼びに行せていたんだろう。
色々と周到な相良らしいなと思った。
相良が当然のように医者へ場を明け渡すと、不本意ながら診察が始まってしまう。
こんなことをしている時間があったら、すぐにでも深月の捜索へ向かいたいのに!
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