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気持ちばかりが焦る私の心情を見透かしたみたいに、相良がドクターの背中越し、冷ややかな視線でこちらを見下ろしてきた。
「長谷川さん。鉄パイプか何かで後頭部を殴打されたとお聞きしていますが、貴方が倒れてから意識を取り戻すまでに大体六時間くらい掛かっています。殴られた前後の記憶はありますか?」
六時間ってことは……今は夜明け前だろうか?
そんなことを思いながらも真剣な眼差しで問われた私は、ところどころ曖昧ながらも覚えている限りのことを話した。そんな私に、「とりあえず今のところ大きな記憶障害は起きていないようですね」と医者が小さく吐息を落とす。
「だったら!」とすぐさま身体を起こそうとしたらゆるゆると首を振られて、「実は長谷川さんが搬送されてきてすぐ、頭部のCT画像を撮りました」と告げられた。
まぁ頭をぶん殴られているのだし、意識もなかったとくれば当然だろう。
そう思って「はぁ」と気のない返事をすれば、後頭部にズキリとした痛みが走った。
その変化を目敏く見つけた相良に、あからさまに不機嫌そうな顔で睨まれた私は、イヤな予感を覚える。
「あんな、長谷川。……お前、頭の骨にちぃーとばかしヒビが入ってるそうだ」
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