66.覚悟【Side:十六夜 深月】

4/5
前へ
/410ページ
次へ
「本当なら俺は退散して長谷川(はせがわ)深月(みづき)ちゃんを二人っきりにしてやりてぇんだが――」  僕はすっかり将継(まさつぐ)さんのベッドの上に座ったまま、もう二度と離さないと言わんばかりに彼に背後から腰に腕を回されている。 「現在進行形で(うち)(もん)が動いてる。院長に呼び出させた久留米(ヤツ)が病院から出てきたところを捕獲させることが出来るが――どうする?」 「――どうするって?」  将継さんの問いに相良(さがら)さんが頭をガシガシ掻きながら「お前や深月ちゃんのコンディションのことだよ」と、吐息を落とした。 「警察(サツ)に引き渡す前に俺らで落とし前つけさせるって話だったろ。なのに、長谷川はまだ予断を許さねぇ状態だし、深月ちゃんも怪我しててお前ら満身創痍だ。とっ捕まえても何も出来ん。俺一人で海にでも浮かべる事は(こたぁ)可能だが――それじゃぁ収まりがつかんだろ?」 「そうだな。私にしたことはともかく……深月にしたことは許せねぇ」  腰に回されている将継さんの腕にぐっと力がこもるのを感じて、僕も将継さんの腕を握りしめる。 (落とし前って……何するんだろう……) 「とりあえずこれで久留米(くるめ)には組の監視がついたから、もう逃すことはない。しばらく泳がせて機会を改めるか? それとも――」  言って、相良さんは僕の瞳をじっと覗き込んでくるから、どうしたんだろうとそわそわしてしまう。 「院長に久留米(ヤツ)の悪事の証拠は仄めかしてある。多分言い逃れすると思うだろうけどな。ただ――深月ちゃんの証言があれば、とりあえず職を奪うことは出来るかもしんねぇ。脅迫の罪でな。長谷川が暴行しただのの脅しも、石矢(いしや)っちゅー証言者がいる。先にそっちを攻めるか?」 「職を……奪う……」  確かに将継さんや僕は先生に酷い目に遭わされた。  だけど――。
/410ページ

最初のコメントを投稿しよう!

739人が本棚に入れています
本棚に追加