67.勝手に動くのだけは無しだ【Side:長谷川 将継】

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67.勝手に動くのだけは無しだ【Side:長谷川 将継】

「僕が将継(まさつぐ)さんや、相良(さがら)さんに恩返し、出来ることは何ですか? 僕、覚悟します。……二人のために役に立ちたい、です」  深月(みづき)にどこか決意を込めた目で見詰められた私は、一瞬驚いて、すぐに小さく吐息を落とした。 「バカだな、深月。私が深月に望むことなんてひとつしかないって分かってんだろ?」  相良の言葉を受けた後のセリフだ。実際に深月が言いたいのはそういうことじゃないことくらい分かっている。分かっていて、私はあえて深月の目を現実――久留米への報復――から逸らしてやりたいと思ってしまったのだ。  相良からは深月にも早急に覚悟を決めさせるよう()かされたけれど、私としては深月にはそんな覚悟必要ないと思っている。  深月を守るのは私の仕事だし、深月にはただ笑っていて欲しい。 「……将継さん?」  いきなりズレた返しをしたからだろう。キョトンとした顔で私を見上げてくる深月を見て、本当にこの子が無事――とも言い切れないが――に戻って来てくれてよかったと、今更ながら安堵した。  だからこそ余計。その反動みたいに私が身動きできないうちに目の届かないところで動くようなことだけは絶対にして欲しくないと思ってしまったのだ。  今の深月には、『動けない将継さんの分まで、僕が頑張るんだ!』とか言って、相良にくっ付いて行きかねない危うさがある。 「私も、相良が言った通り久留米(くるめ)にはやったことの落とし前を付けてもらう必要があると思ってる。けど――」  そこで私が声のトーンを低めたのに気が付いて、深月が不安そうに「けど?」と私の言葉尻を繰り返した。 -------- 突然ですが表紙画をリニューアルしました! 市瀬(いちのせ)(ゆき)様(https://estar.jp/users/117421755)に依頼しております。 (作品シェア以外の無断転載等、固くお断りいたします) 将継さんと深月くんこんなイメージだと伝わりましたら♥ 2b50392d-2032-4c73-b72e-630cde41401f 今後とも『ネコヤモ』をよろしくお願い致します。 鷹槻(たかつき)れん×ちろる
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