67.勝手に動くのだけは無しだ【Side:長谷川 将継】

6/6
前へ
/411ページ
次へ
「けどお前、退院させたら動き回るだろ」 「まぁそれは確かにそうかも知んねぇけど……」  相良(さがら)の鉄壁ぶりに弱り顔で先生を見詰めたら、「日常生活を普通に営んで頂く分には問題ありませんよ? ただ、頭をぶつけるようなことだけはしないでください」と釘を刺された。 「ってことだ、相良。頭はぶつけねぇように気ぃ付けるから……。――な?」  深月(みづき)は私たちのやり取りをすぐそばでオロオロと見つめていたけれど、結局主治医と私にごり押しされる形で相良が退院を認めたのを見て、ホッとしたように吐息を落とした。  その上で、相良から言われたのだ。 「けど……帰り先はお前ん()じゃねぇから」  場所が久留米(くるめ)に割れているところへ、相手も含めて葛西組(かさいぐみ)の監視下にあるとはいえ、私たちを自宅へ戻すことだけはどうしても承服しかねると言われる。  私としては久留米の襲撃以来ずっと、咲江(さきえ)の仏壇が放置されっぱなしというのが気になって仕方ないのだが、そこは「位牌(いはい)遺影(いえい)は俺が持って来てやるから我慢しろ」と相良に押されて。  結局退院後は相良が手配してくれたホテルに、深月と二人で滞在するという形で話がついた。  とはいえ、専用フロントありのエグゼクティブルームなのはやりすぎだろ?と思ったのだが――。
/411ページ

最初のコメントを投稿しよう!

740人が本棚に入れています
本棚に追加