68.僕にしか出来ないこと【Side:十六夜 深月】

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***   「咲江(さきえ)。色々あったけど無事に退院出来たよ。守ってくれて有難う(あんがと)な」  あの後、ルームサービスで豪華すぎるディナーを終えた僕たちの頃合いを見て、相良(さがら)さんが咲江さんの位牌(いはい)遺影(いえい)を持ってきてくれて。  将継さんと二人、並んで手を合わせている。 「深月も無事に戻ってきてくれたし、私の怪我も経過良好だ。これからも見守っててくれな?」 「咲江さん、僕と将継さんを守ってくれて、ありがとうございます……」  小さく呟いたら、将継さんは僕の肩を抱き寄せてくるから何だかドキドキしてしまう。相良さんの言葉を意識しまくりの僕は、に緊張が止まらないのだ。 「深月、先にシャワー浴びておいで?」 「シャ! シャワー! ですか!?」  盛大に慌てふためくと将継さんがククッと笑って「深月、さっきから様子がおかしいけど、どうした?」と、意図してなのかしていないのか、耳元で囁いてくるから――。  僕は逃げるように彼の腕の中から抜け出すと、勢いよく立ち上がって少しだけ後ずさった。 「べ、別に普通、です! じゃ、じゃあ、お先に失礼します!」 ***  シャワーを浴び終えてベッドの上で邪念を振り払おうと正座して瞑想していると、シャワーから出てきた将継さんはテーブルの上の咲江さんの遺影を伏せた。  そのままベッドに乗り上げて僕をギュッと抱きしめるから、緊張値はマックスに到達し、彼の腕の中でぱくぱくと魚のように口の開閉を繰り返す。 「深月……」  ベッドに寝そべった将継さんは僕の腕を引いて、その広い胸の上に身体を懐かせた。自然、二人で寝そべる形になる。 「愛してる」  その言葉に僕の心臓はうるさいくらい跳ね回って、思わず将継さんの胸元の布地をギュッと握りしめた。  今、こうして抱き合えているのも、相良さんや咲江さんのお陰で、僕はみんなに支えられている。  でも、一番僕を支えてくれているのはいつだって将継さんなんだ……。
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