68.僕にしか出来ないこと【Side:十六夜 深月】

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*** 「じゃあ深月(みづき)、行ってくるから。絶対にここで大人しく待ってるんだぞ?」 「気を付けて、くださいね?」  言ったら、すぐに口付けが飛んでくる。  こんな時でも〝いってきますのキス〟を忘れない将継(まさつぐ)さんは本当に律儀だと思う。  彼が部屋から出て行って、僕は拳をギュッと握りしめる。 (将継さんにだけ負担をかけちゃいけない――)  昨夜、決意したことだ。    将継さんが部屋を出た三十分後、僕も病院へ向かおうと立ち上がり部屋を出る。  先生はもう相良(さがら)さんの監視下にあるらしいから、突然拉致されることはないだろう。 (僕一人でも行ける……!)   しかし――。  エグゼクティブルーム専用のエレベーターの前まで行くと、相良さんの組の人に声を掛けられてしまう。 「十六夜(いざよい)様、どちらへ? 若頭(カシラ)長谷川(はせがわ)様より、十六夜様が部屋を出る際は必ず警護を付けるよう(おお)せつかっておりますのでお供させて頂きます」 「……え。あ、あの……ちょっとラウンジまで……」 「では、お供します」 (どうしよう……これじゃ外に出られない……)  とりあえず護衛の男性を引き連れて、僕はエグゼクティブルーム専用のラウンジへ到着した。しかしそこは軽食やアルコールを楽しむ場なので僕に用はない。  立ち止まった僕を訝しげに見つめてくる男性の視線を感じつつも、そこで名案を思いつく。
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