69.嘘つき【長谷川 将継】

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 それこそ外へ出られるならば、最悪何人付いて来ても問題はないとさえ思っている。  だが極力深月(みづき)の警護に従事して欲しいと考えれば、付いてこさせるにしても一人だ。  家へ取りに帰りたいものがあると言っても、きっと許してはもらえないだろうと考えた私は、そこでふと一石二鳥なことを思い付いた。 *** 「おはようございます。キミたちは……相良(さがら)の人たちですよね?」  あえて自分から葛西組(かさいぐみ)の面々へ近付いた私は、営業用スマイルを浮かべてその場の男達に朝の挨拶をする。  舎弟とか手下とかいう言葉を使わなかったのは、ホテル側へのせめてもの配慮だ。 「あ、はい」  口々に肯定の意志表示をしてくる彼らに、私は流れるように告げるのだ。 「ちょっと相良に会いたくなったんだが、ボスのところへ連れて行ってくれるかい?」  いずれにしても相良がいないと私に出来ることなんて微々たるものだ。  ならば最初から相良のところへ出向いて巻き込んでやればいい。  ホテルまで迎えに来てくれ……が却下されたのだから、こちらから出向くしかないじゃないか。深月とふたりでホテルに閉じ込めておいたはずの私が会いに行けば、きっと相良は慌てるだろうし、怒ってくるだろう。だが、そんなの知るか。
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