69.嘘つき【長谷川 将継】

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「キミたちも私一人で出歩くのは相良(さがら)から阻止するように言われてるんだろう? そんなわけで――」  私は話し掛けながら三人の様子をうかがって、一番だと思われる男にターゲットを絞った。 「悪いんだがキミ、私と一緒に来てくれないか?」 「で、ですが長谷川(はせがわ)さんっ、俺は……」 「私の見たところだとこっちの彼が三人のリーダーだよね? で、こっちの彼が、一番腕っぷしが立つ。違うかい?」  立ち居振る舞いが最も洗練されているように見える男が、この三人の取りまとめ役だろう。  そうしてその男の横に立っている彼は、他の二人より動き易そうな格好をしている上にガタイがいい。恐らくは見たまんま、腕っぷしの強い戦闘要員といったところだ。  全てにおいてインパクトに欠けるのが、私が目を付けた男だ。彼の立ち位置が恐らくはこの三人の中ではいっとう低い。雑用などを任されやすいポジションに違いないと踏んだのだけれど、どうやらビンゴだったらしい。  その証拠に、私の言葉に三人が〝何故分かったんだ?〟という風に息を呑んだのが分かった。  まぁ、そのくらいの力関係が瞬時に見抜けないようじゃ、社長は務まらないからね。 「そんなわけでキミたち二人にはこの場に残ってもらいたい。何せ部屋には私の大事な恋人が残っているからね、その子の警護を手薄にはしたくないんだ。――分かってくれるよね?」  言いながら、私は三人の顔を順々に眺めた。  そうして駄目押しのように付け加えるのだ。 「その点私はキミたちのボスの元へ出向こうってんだから、相良と合流後は戦力的が最強になるよね? そう思うでしょう?」  だから私のお目付け役兼案内係は、雑用をやらされているであろう彼で十分だと言外に含めたら、リーダー格の男が「ですが」と難色を示してくる。
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