69.嘘つき【長谷川 将継】

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 まぁ相良(さがら)の指示は〝二人を絶対にホテルから出すな〟だろうし、当然の反応だよね。  だが、私も引くつもりはないのだ。 「とりあえずキミたちが来る来ないは別として、私は相良のところへ向かわせてもらうから」  言ってくるりと(きびす)を返すと、足早にエレベーターへ向かった。そうしてそのまま操作パネルの下降ボタンをこれみよがしに押すのだ。 「ちょっ、長谷川(はせがわ)さん、勝手をされては困ります!」  慌てた様子で三人が私を取り押さえようと近付いてくるのを視認した私は、待ってましたとばかりにあからさまに肩をすくめてみせる。 「あのさ、相良から聞いてると思うんだけど……、、いま余り頭に衝撃を与えるの、良くないんだよね」  その言葉に、こちらへ伸ばされていた手が戸惑ったように(ひる)んだ。  それを見ながら、はやってきたエレベーターに悠々と乗り込む。 (キミたちに恨みはないんだが、すまないね)  心の中で謝罪しながら、彼らをじっと見詰めたら、 「お、俺がっ! 一緒に行きます!」  最初に私が付いて来て欲しいと白羽の矢を立てていた男が、意を決したように箱の中へ入ってきた。
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