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深月が自分のことを余り話してくれないのと相反するみたいに、私は自分のことを何故か深月には包み隠さず知って欲しいと思ってしまって。
そういう弱さも含めて私なんだと先にさらけ出すことで、深月も少しずつでもいいから私に心を開いてくれたらな?なんてエゴがあったのかも知れない。
普通ならここで「それ、どういう意味ですか?」と返ってくるんだろうが、深月は私にそんなことを問うていいのか分からないみたいに固まってしまったから。
私は自分からその先を語ることにした。
「ほら、朝一緒に手を合わせた仏壇の彼女がいただろう? ──私の最愛の妻。彼女が生前ここのケーキが好きでね、何かあるたびにしょっちゅう買って来てくれてたんだ」
彼女が亡くなって五年。
不景気な昨今、未だにそのケーキ屋がつぶれず経営していてくれていたことにちょっぴり嬉しくなって。
「何て言えばいいのかな。彼女の死後、どうしても自分一人ではそこのケーキを買い求める気になれなかったからね……、深月が今日、そこのケーキを買って来てくれたのも、何かの縁かな?って思ったんだ」
一人では無理だけれど、きっと深月とならまた美味しくそこのケーキを食うことが出来る。
何故だか分からないけれど、そんな気がして。
素直にその気持ちを吐露したら、すごく驚いた顔をされてしまった。
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