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足がいうことをきかないし、このまま倒れんのかな? とか呑気に思っていたりする私の心情とは裏腹。
「将継さん!」という深月の悲痛な声音が聞えて、それに被せるように相良からも「長谷川!」と呼ばれた私は、それと同時に力強い腕に抱き止められていた。
「相良、あんま耳元で大声出してくれるな……」
悪友に支えられて床とのキスを免れたくせに、(つまんねぇの。抱き留めてくれたの、深月じゃないのか……)なんて内心舌打ちしながらそんな憎まれ口を叩いたなんてバレたら、『んな冗談言ってる場合じゃねぇだろ!』と、相良に怒られてしまうだろうか。
けど仕方がないだろ?
こんな時だって私は、どうせなら深月に抱きつきたかった……とかくだらない思いを抱いてしまう程度には深月馬鹿なんだから。
出来ればしっかり自分の足で立って深月を安心させてやりたいのに、相良に寄り掛かる形で支えられている身体を自力で立て直すこともままならないとか――。
「――ホント何だよ、これ……」
自分で自分の身体をコントロールすることがままならないのは、物心がついてから初めてのことだ。その余りのもどかしさと気持ち悪さに思わずつぶやいた言葉を、相良が目敏く拾う。
「こんなになるかも知んねぇから先生が頭ぶつけんなって言ってたんだろーが! こうなったからには引きずってでも病院連れて行くからな!?」
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