72.僕と将継さんのために【Side:十六夜 深月】

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72.僕と将継さんのために【Side:十六夜 深月】

 将継(まさつぐ)さんは病院へ着くなり即手術となって、僕と相良(さがら)さんは二人でそわそわしながら手術終了を待った。  やがて手術室から出てきた彼は、局所麻酔での治療だったので意識もはっきりしていて、僕と相良さんは胸を撫で下ろして。 「長谷川(はせがわ)、これでようやっと俺も安心出来る。さっさと手術してりゃーよかったんだよ。最初っから」 「ああ……。心配掛けたな」  将継さんは局所麻酔で手術した部分から、まだ管が繋がっていて、僕はその手をぎゅっと握っていた。看護師の説明によると夜は無意識に管に触れないようベッドの手すり――ベッドガードに手首を拘束されてしまうらしい。 (将継さん……可哀想だ……)  「お前は一週間入院が必要だ。動かすわけにゃぁいかねぇから、久留米(ヤツ)の落とし前は俺一人でつけさせる。――いいな?」  そこで将継さんは僕に目配せしてくるから、安心させるように静かに頷いて見せた。 「相良さん。……落とし前に行くなら、僕も一緒に連れて行ってください」 「深月(みづき)ちゃんも?」 「長年慕った先生です……僕も、見届けたいんです。お願いします! 相良さん! ……駄目、ですか?」  相良さんはしばし何事か考えている様子だったけれど、僕の真剣な眼差しに根負けしてくれたのか、「わかった。ただし連れていくだけだかんな?」と了承してくれた。 ***  将継さんを一人病院に残すのは忍びなかったけれど、僕は彼と『相良さんの暴走を止める』という大事な約束をしている。  相良さんと二人で病院を出ると、駐車場には運転席に石矢(いしや)さんが乗った車が控えていた。 「石矢、準備出来てんだろうな?」 「はい、若頭(カシラ)。すぐにでも始末出来るようにしてあります」  始末――その言葉を聞いて僕は身がすくむ思いになった。これから先生は一体何をされてしまうんだろう。 (絶対に僕が止めなきゃ……)
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