73.許しと後悔と償いと【Side:長谷川 将継】

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 私はまともに動くようになった右手で深月(みづき)の頭を、その無事を確認するみたいに優しく撫でてやりながら彼の言葉に耳を傾ける。  結果、私が頼んだことを全力で遂行(すいこう)してくれたがゆえの名誉の負傷だと聞かされてしまっては、それ以上深月を責められようはずもない。  見舞いにくるなり物凄い勢いで謝罪してきた相良(さがら)への沙汰は、彼を全力で庇う深月の手前一旦保留にしたが、まぁそれについてもきっと、私には相良を責めることは出来ないだろう。 ***  相良の配慮で深月と二人きりにしてもらったけれど、結局それほど長くは一緒にいられなかった。  病院側の規則で、一回の面会で許される時間が十五分以内と定められていたからだ。  深月不足を補うみたいに彼からキスをしてもらったりはしたけれど、正直そんなんで足りるはずがない。  退院したら思いっ切り深月を感じたい。 (――っていうか抱きたい!)  そう(こいねが)ってしまうけれど、深月の心は私の欲望(想い)に追いついているだろうか?  そんなことが結構不安に感じられてしまったのは、散々好きだと告げてきたつもりだったのに、深月に伝わっていなかったかも? と思い知らされたからかも知れない。  ――言葉だけで足りないなら、身体も使って伝えるしかないだろ?  そんなことを思っているだなんて知ったら、深月はどう思うだろうか?
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