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洗濯物と布団を抱えながら戻ってきた長谷川さんが、それらを綺麗に畳みながら「そういえば、さ――」と不意に声を掛けてくるので再びビクッと肩を震わせる。
「深月、今日病院って言ってたけど、どっか悪いのか? 風邪とかひいてる? もしかして具合悪かったりしねぇーよな?」
その言葉にドキリと背筋に冷や汗が滴りそうになる。
「具合悪く……は、ない、です。……ちょっと、持病があって……身体的なものなので……。あ、でも、身体が不自由とかそんなんでもなくって……。えっと……言い難いことなんです……。すみません」
顔を上げられないままポツリポツリと喋ると長谷川さんはカラッとした微笑みを向けてきた。
「まぁ、深月が言い難いんなら無理には訊かねぇけど。でも調子悪かったら遠慮なく言って? 食欲はあるか? 夕飯は食べられそう?」
コクコクと頷くと、長谷川さんは「はい、これ深月の服」と言いながら、綺麗に折り畳まれた僕のマウンテンパーカーとカットソー、スキニーパンツを渡してくれる。
「あ、ありがとうございます……。あ、あの……この服は……脱いだ方が……いいですか?」
「どうして? 今日は泊まっていくだろ? 明日着るといい。寝る時はまたスウェット貸してやるから。――な?」
泊まることが確定している……。
どうしたものかと呆然と立ち尽くしていると、布団を抱えた長谷川さんが、「深月、こっちの襖開けてくんね?」と言いながら、朝、手を合わせた仏間の隣の部屋を顎で指した。
言われるがまま襖を開けると、長谷川さんがその部屋に入っていくので何となく僕も後ろから着いていく。
そうして、彼は何でもないことのように言った。
「ここ、深月の部屋な?」
――僕の部屋……?
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