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10.深月の怪我【Side:長谷川 将継】
本来私はそれほど強引な性格ではない。
だが、社長として社員を抱えている手前、時と場合によっては強気にことを進めなければいけない時があることも承知している。
何となくだけど、今がその時だと思ってしまった。
現在職がないという深月に、半ば無理矢理。自分が寝室にしている仏間の隣の和室を〝深月の部屋〟だと勝手に割り当てると、わざと断定形で言葉を引き結んだ。
「……僕の、部屋?」
当然何を言われたのか分からなかったのだろう。
キョトンとした顔で深月が私の言葉を反芻するから、私もあえて軽い感じで「そう、深月の部屋」と再度繰り返してやった。
それはまるで何度もそう言い聞かせているうちに、そんな風に思い込んでくれるんじゃないだろうか?と言う一種の刷り込みみたいなもので。
「な、んで……?」
なんて深月が至極当然の疑問を口の端に乗せてくるのでさえ、私はクスッと笑って「私が今、そう決めたからだよ?」と理由になっているんだかないんだか微妙な、手前勝手な答えで受け流した。
「仕事をしていないってことは収入がないんだろう?」
余り色々なことをされ過ぎると、礼がし切れなくなると困った顔で話してくれた深月は、恐らくそんなに貯金もないはずだ。
だとしたら――。
「今はアパートで独り暮らしをしてるんだっけ?」
「……はい」
「その家賃だって馬鹿にならないよな?」
「それは……そうです、けど……」
「だったらいっそ、アパートを引き払ってここへ越してくるのも手だと思わない?」
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