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「この辺をこう、包丁でザシュッと落とすだろ。そしたら流水でこんな風に洗うんだ」
言いながら、結局頼んだことは自分で済ませちまったな?と思って。
「なぁ、ラップにこれをくるんでもらえるか?」
いつもなら熱湯を沸かして湯がくところだけど、深月にそれを頼んだら火傷しかねないと思って、急遽予定変更。
キッチンの片隅のラップを指さしたら、深月が「ラップ?」と不思議そうな顔をする。
「電子レンジでチンしようと思ってね」
言ってから、うちの電子レンジはチンとは鳴らないんだっけと思ったら、ちょっぴりおかしくなって。
思わずククッと笑ったら、深月にキョトンとされた。
「……長谷川さん?」
「ああ、ごめん。自分で言っといて何だけど……レンチンって死語だったよなって思っただけだ」
「……確かにそう、ですね」
「だろ? ちなみにうちのはさ、調理完了を知らせる音楽が流れるんだけど、深月ん家のはどう?」
「うちのは……」
なんてどうでもいいことを話しながら、深月に「こうやってラップの上にほうれん草を置くだろ? そしたらクルクルッと軽く包んでから……」と作業を進めるのも忘れない。
「あの、何秒くらい……?」
「んー。とりあえず五百ワットで一分くらいかな?」
深月がレンジにほうれん草をセットしたのを見届けてから、私は冷蔵庫からシイタケを取り出した。
茶わん蒸しに入れるから小さめのやつを選んだけれど、さすがにこのまま器へ入れるには大きすぎる。
温めを開始した電子レンジの前から動かない深月に手招きすると、「悪いんだけどさ、シイタケ。洗ってから切ってもらえるかな?」と、手にしていた二つを手渡した。
どこか戸惑いつつも、深月が流水で傘の裏側部分を洗い始めたのを見て、私は別の作業に移ったのだけれど。
「わぁー! ちょっと待って深月、いくら何でもそれはっ!!」
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