12.いい加減自覚した?【Side:長谷川 将継】

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 テレビも、私が電源を入れた時に映っていたチャンネルのまま『やさしい手話』という学びの番組を垂れ流している。  リモコンを握っているにも関わらず、チャンネルザッピングをするわけでも番組表と睨めっこするわけでもなく、所在なげに座布団へちょこんと座ったままでいた深月(みづき)の雰囲気が、新居に戸惑いまくりの借りて来た猫みたいで可愛くて。  持ってきたラップなどを机上に置きながら、 「なぁ深月、手話とか興味あんの?」  そんなことないだろうなと分かっていながら、わざと意地悪く問い掛けたら「え? 何でですか?」とキョトンとした声が返る。 「だってほら。ずっと観てるから」  言ってテレビを指さしたらハッとした顔をして「あ、あの……これは……」と口ごもる。  心ここにあらずでただ座っていただけだったのは一目瞭然だったのに、揶揄(からか)い過ぎただろうか。 「深月は普段あんましテレビとか観ねぇタイプ?」  深月の手に握られたままのリモコンを抜き取ると、テレビの電源を落としながら問い掛けてみた。 「……そ、そうかも……知れません」 「そっか。じゃあ普段は何して時間潰してんの?」 「スマホであてもなくネットサーフィンをしているか……、あとは……えっと……寝たり、しています」  それを聞いて、確かにその方が深月らしいな?と思った私は、思わず笑ってしまった。
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