693人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あの……、やっぱりおかしい……です、か?」
「いんや、おかしくねぇよ。深月らしいなって思っただけだ」
言いながら深月の前に座ると、「テレビなんか切って、好きなようにしてくれてて構わなかったんだぞ?」とつぶやいて、深月の手をそっと取った。
「あの……長谷川、さん?」
「はい、ペナルティーな?」
ククッと笑って血の滲んだ絆創膏が巻かれた深月の手の甲へわざと艶めかしてチュッとキスを落とすと、深月が真っ赤になってうつむいた。
「ねぇ深月。私のことは何て呼ぶんだったっけ?」
「えっと、ま……将継、さん……?」
「はい、よく出来ました」
言いながら深月の左手人差し指から小指までの四本を、親指の付け根の辺りまで一纏めにラップでぐるぐる巻きにして、その上からビニール袋を掛けた。
「あ、あの……、将継さん?」
戸惑う深月に「ほら、手ぇ動かさない」とだけ告げて、そのまま袋の口の一〇センチばかり内側──丁度深月の手首の辺り──をビニールテープでぐるっと巻き留めてから、テープ部分を覆うようにはみ出したビニールを折り返して包んだ。
そうしておいて、皮膚とビニールとの境目を塞ぐようにもう一度だけぐるりと一周ビニールテープで巻いてから、私のすることをソワソワと見つめている深月に「ネットで調べたんだけどな、こうすると傷口が濡れねぇらしいぞ?」と説明をした。
怪我したのは指一本なので、ちぃーとばかり大袈裟な気もするが、濡れるよりはいいだろう。
そう思って「よし、準備完了」とつぶやいたら「え? ……あの、これ……?」と、深月がグルグル巻きにされた手を所在なげに揺らせた。
最初のコメントを投稿しよう!