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「まさつ、……さっ……ごめっ、なさ……い」
荒い呼吸を繰り返しながら縋り付いていた膝頭に顔を埋めながら謝ると「何がごめんなさい?」と妙に上擦っている気がしたけれど優しい声が返ってくるから。
「タオルと……ぅ、……っ……手……汚した、から……」
嗚咽交じりに呟くと将継さんが「よしよし」と泡だらけの頭を大きな掌でワシャワシャと撫で回してくれる。
「んなこたぁどうでもいい。それより──怖かったな? 深月の事情何も知らなかったから……怖い思いさせてマジでごめんな?」
そっと顔を上げると、僕は思わず目を瞠ってしまった。
将継さんの下腹の中心が、さっきまでの僕と同じように勃ち上がっていることに気付いてしまったからだ。
「あ、あの……まさ、つぐさんは……?」
恐る恐る訊ねると「あー。私のことはいいから。ただの生理現象だから気にすんな」と言いながら苦い笑いを見せた。
「で、でも……僕だけ……」
俯きながら消え入るような声でそこまでは言えたけれど、さすがにそれ以上のことは恥ずかしくて言及できず、慌てて前を向く。
「ほら。モタモタしてたら風邪ひいちまう。頭と身体流すぞ?」
言いながら、シャワーから温かいお湯を出して、僕の耳を塞いで丁寧に頭の泡を洗い流してくれた後、「タオルの下は自分で流せるか?」と訊かれたので、たちまち羞恥に真っ赤になってしまう。
「……は、はい」
「んじゃ、私は出るから。湯船に浸かってからゆっくり出てくりゃーいい。脱衣所に手に巻いてるモンもそのタオルも置いといてくれていいかんな? 着替えは用意してあるから」
それだけ言って将継さんは踵を返して風呂場から出ていくので、僕はその広い背をぼんやりと見つめてしまう。
(何で……僕、急に治ったの……?)
十数年、熱など持つことのなかった身体が、将継さんに触れられただけであっという間に反応してしまうなんて。
いそいそと(まだ信じられないことに)滑り気を帯びた下肢を洗い流して湯船に浸かるとブクブクと頭まで沈み込んだ。
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