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何だか将継さんとどう顔を合わせたらいいのかわからず、百数えるどころか千くらい数えて風呂から出ると、お言葉に甘えるまま汚してしまったタオルと手首に巻かれたビニール袋を洗濯カゴ(はたしてここでいいのだろうか……?)に入れて用意されていたバスタオルで身体を拭いてスウェットに着替えた。
怖々とリビングに戻ると、ちゃんと服を着た将継さんが僕を見てククッと笑ったので、どうしたんだろう?と、頭に疑問符を浮かべる。
「深月、ちょっとこっちにおいで?」
言われるがまま近付くと「やっぱブカブカなんだよなぁ」と笑いながら僕のスウェットの裾をまくり上げてくれた。
「あ、あの……ありがとうございます……。それから、さっきは……すみませんでした……嫌な思い、させて……」
男の自慰を手伝わせた挙句、射精する瞬間まで見せつけてしまって、さぞや最悪な思いをさせてしまったことだろうと項垂れる。
「別に嫌な思いはしてねぇーよ。むしろ深月に嫌な思いさせちまったな。――言い難いって言ってた病気ってあのことだったんだろ?」
「……はい。もう、十年以上……その、反応、しなかったんですけど……。何故か……まさ、つぐさんに触れられたら反応、してしまって……汚いとこ、見せてごめんなさい……」
俯いたままで謝るとクシャリとまだ半乾きの頭を撫でられて、「どっちかってぇと、謝るのは私の方なんだわ」と将継さんが柳眉を寄せるので、また頭に疑問符が浮かぶ。
「なん……で、ですか……?」
「深月も見たよな? 私は男が相手でも生理現象が起こっちまうような人間ってこと。――な? 嫌な思いしたろ?」
その衝撃の告白に目をパチクリさせてしまう。
将継さんも、僕を陵辱したあの男と同じ性癖なんだということは認識したけれど、どう考えても同じ類だとは結びつかなかったから。
それに僕だって人のことは言えないのだ。
(だって片恋している相手が同性の先生なんだから……)
「将継さんに……嫌な思いをすることはない、です……」
「あんがとな。でも、私も告白したから深月も告白してくんねぇか? まさかその歳で枯れてるってこたぁねぇーわな? 何かあったからなんだろ?」
僕は瞳を滲ませてゆっくりと頷いた。
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