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絶対に抱いてはいけないその感情は、だけど自分の中に押し込めておくと、とんでもない形で発露しそうにも思えたから。
私は「はぁー」と熱い吐息を落とすと、解放を求めてガチガチに張りつめた屹立に手を添えた。
ギュッと手のひらに握り込んだだけで、シャワーの水だけではないぬるぬるとした先走りが鈴口から溢れて竿を濡らしているのが分かって。
ゆるゆると快感の階を追うように手を上下させれば、ザーッという水音に紛れるように、だがそれとは明らかに違う濡れた音が浴室内に響き始める。
「は、ぁ……、み、づっ……」
妄想の中、私に向かって白く愛らしい小ぶりな尻を突き出して誘う深月の名を無意識に呼びそうになって、私は寸でのところでグッと唇を噛みしめてこらえた。
「さすがにダメ、……だろ」
大人の男に酷い目に遭わされたあの子を、脳内とは言え穢そうとしているのだ。
そのことだけでも相当に罪深いと言うのに、実際に彼の名を口にして……この許されない想いを外に溢れさせてはいけない。
今まではどんな時だって、愛しい妻――咲江の痴態を思い描いては自慰に耽っていたはずなのに。
どんなに頭からそちらに持っていこうとしても、今日は深月のことばかりを思い描いてしまう。
(咲江……、すまない)
そのことが、妻に対しても不義理で申し訳ない気がして。
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