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朧気に瞼を開けて僕は瞳を瞬かせた。
何故か僕は将継さんと一緒に布団に包まっていて、それだけならまだしも、きつくきつく抱き締められていたのだ。
確か日本酒を飲んで部屋に戻ったところまでは覚えている。
しかし、目の端には仏壇があって、ここは僕に与えられていた部屋じゃなくて将継さんの部屋であることを認識した。
(えっ⁉ ちょっと待って! どういう状況⁉)
僕を抱き締めている将継さんはまだ夢の中にいるようで、綺麗な琥珀色の瞳は閉じられていて、至近距離で見ると睫毛もどこか色素が薄く長い。
こんなに間近で誰かの顔を見たのは初めてかも知れない。
枕元に置かれている目覚まし時計の時刻は早朝五時半を少し過ぎたところなのだけれど、将継さんが起きる気配は一向にない。
とりあえずこの抱き締められた状態はどうすればいいのだ?とテンパりながら考えてみるけれど、どうやら二日酔いをしているようで全く頭が働かない。
けれど――。
密着している将継さんの体温が妙に高い気がして。
腕の中で少しだけ身じろいで、将継さんの額に手を当ててみると酷く熱を持っていて驚いてしまう。
(将継さん……熱がある⁉)
僕を半裸でお風呂に入れてくれたりしたからだろうかと、たちまち罪悪感に駆られて――。
体温計とか風邪薬とかタオルとかどこにあるだろうか?と焦ってしまうけれど、身体をガッチリとホールドされているので動くことが出来ない。
かといって、無理矢理腕を払い除けて起こしてしまうのも憚られるし……大人しく将継さんが目覚めるのを腕の中で待っていることに決めた。
将継さんの体温が凄く熱くて、密着している胸から鼓動が聴こえてきそうなこの状況が何だか凄く面映ゆいのだけれど。
僕も二日酔いで頭が熱を持っていて。
その温かな腕の中に身を委ねてしまうのは、この場合致し方ないだろうと思ってしまうのは間違いだろうか?
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