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将継さんが「おはようのキスでもしたいところだけど、風邪感染しちまったら困るからな。私にこうされるの、嫌? 先生が良かった?」と綺麗な瞳を眇めて見せた。
「あ、あの……」
(な、何か将継さん……怒ってる?)
先生の名前が出てから将継さんの様子が何だか変で、とりあえず片腕が腰に移ったので抱き締められている腕の力が緩んでホッとする。
「今日は仕事も行けそうにねぇーな……。深月は大丈夫か?」
「は、はい……大丈夫、です……。僕に、お礼に看病させてください……ご飯……残ってますよね……? スマホ見れば、お粥くらいは作れると、思います……。将継さんは、眠っていてください! あ、それとも……病院とか行きますか? あ、お仕事のお休みの連絡は……?」
一体僕に出来ることは何だろうかと一人あたふたしてしまうと、将継さんが再び僕を片腕で抱き寄せて後頭部の髪の中を指で弄られる。
「んー……何もしなくていいから、もう少しこのまんまでいてくんね? それが一番薬になると思うんだわ。それとも……深月はその先生とやらに病気が治ったって報告しに行かなきゃなんねぇか?」
その言葉にチリリと胸が痛む。
「あ、あの……僕の病気……やっぱり治ってなかったみたい、なんです……。昨日、それで落ち込んで、眠れなくて……お酒……」
「それって、一人で試したってこと?」
愉快そうに瞳を輝かせた将継さんに、墓穴を掘った……と思って恥ずかしくなって身を捩ると、図らずも腰に這わされていた指先が柔らかい胸の粒に触れて。
それと同時、太腿に硬い何かを押し付けられる。
「んっ……指っ、当たって……待って、ま、まさつ……ぐ、さんっ……」
胸先を掠めるそれに身体が跳ねてしまったことに気付いたらしい将継さんが、急所である耳朶に淫意を催すような低められた甘い声で囁いた。
「ひょっとして……深月――俺だから反応するんじゃね?」
熱に浮かされた僕たちは、どうやらお互いに少しばかり正気とはかけ離れているのかもしれなかった。
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