18.玉子粥とソーダ味のアイス【Side:長谷川 将継】

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 深月(みづき)の心の傷と、やんちゃな連中のそれを同一線上で語るのは少し違う気もするが、まぁ……みんな色々あるわけで……と考えてしまえば深月のトラウマにひるんでばかりもいられねぇなとも思って。 (あー、そう言やぁ私は咲江(さきえ)の前でなんてことをしちまったんだ……)  妻の仏前でするには、滅法配慮に欠ける行為だったと、今更のように羞恥心(しゅうちしん)と罪悪感がこみ上げてくる。 (熱のせい……だよ、な?)  恐らくはそのせいで判断力が鈍っていたに違いない。  いくら深月が可愛かったからって……仏前であんなこと。  普段の私なら絶対にしなかったはずだ。  居た堪れなくなった私は、遺影の中で柔らかく微笑む咲江から慌てて視線を逸らせると、小さく吐息を落として深月を風呂へと誘い掛けた。  深月の手の怪我は未だ健在なのだ。  シャワーを浴びるにしても、養生が必要だろう。  断じて咲江の視線から逃れたいから、という後ろめたさだけがこの部屋を後にする理由じゃない、と思いたい――。 *** 「あの、将継(まさつぐ)さん……、大丈夫ですか?」  どうやら年甲斐もなくアクティブに動き過ぎてしまったらしい。  元々熱のあった身体は、若い頃のように無理はきかなくて。  欲望に流されるまま深月に触れ、その罪悪感を洗い流したいみたいに彼がシャワーを浴びるための下準備を施した私は、今度こそ自制心を総動員して深月のシャワーに立ち入ることはしなかった。  髪の毛は昨夜しっかり洗ってやったし、それこそ湯でサッと流しただけで、身体の方の汗や体液なんかはそれなりに綺麗さっぱり落とせると踏んだからだ。 (この()に及んで一緒に風呂に入ったりして……また良からぬ思いがわき起こっちまったら……今度こそ咲江に合わせる顔がねぇわな)  そんなこんなで、きっかり深月が風呂から上がってきた後で自分のシャワーを済ませたのだけれど――。  張っていた気が一気に抜けたからだろうか。  情けないことに、程なくして私は再度ダウンしてしまったのだ。
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