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アイスを買わなきゃいけないので、先に着替えを取りにいくためにタクシーに乗って自分のアパートに帰宅した。
適当なボストンバッグに着替えを詰め込んでいたのだけれど、(さて? 何日分くらい必要だろう?)としばし長考した後、とりあえず念のため一週間分くらいの衣服を詰め込む。
それにしても、ずっとこの部屋で生活していたはずなのにやっぱり何だか空虚感を覚えてしまい、僕はまたこの部屋で一人で過ごせるだろうか?とぼんやりと考えた。
ふと、将継さんが言ってくれた〝宿泊研修〟という言葉を思い出して、それが酷く魅力的なワードであると思ってしまって。
だけど――。
一人になって冷静に思い出してみると、僕は彼と〝実験〟とは言えあんな恥ずかしいことをしてしまっているから。
いくら義父で心得があったとはいえ、自ら積極的に男のモノを咥え込むような真似をしてしまったんだと思ったらたちまち羞恥一色に染まって。
(軽蔑されたかな……?)
僕は思わず、誰が見ているわけでもないのに真っ赤になってしまった頬を隠したいみたいに両手で顔を覆ってベッドに雪崩込んだ。
「……違う……あれは事故と実験だ……。意識しちゃいけない……」
自分に言い聞かせるように何度も小声で呟いて。
この気持ちをこれ以上刺激しないように、急速に湧き上がった感情の細波を何とかやり過ごすために身体を丸めてベッドで打ち震えた。
(だって……将継さんは優しいから僕の面倒を見てくれてて……あんな行為をしてしまったのだって、病気が治ったかの確認だ……)
それなのに――。
胸にわだかまるこの気持ちは何だろう。
僕は将継さんに何を期待しているんだろう。
(それに……僕には先生が……)
そこで、はたと気付く。
将継さんに触れられて、彼限定(?)で病気が治ってしまったことを先生に報告した方が良いのだろうか?
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