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02.秘密の愛の言葉を
「あたしね、あの人と早く別れたいの。そして隼ちゃんと一緒になりたい。あの人と出会う前に隼ちゃんに出会えていたらよかったのにって、最近いつもそんなこと思ってるの」
美琴はそう言いながら隼平の裸の胸に指を這わせる。秘密の愛の言葉をそこに書きつけるように。
「そうだね。俺も美琴ともっと早く出会っていればって思うさ」
そんな隼平の言葉を聞いた美琴は、覚悟を決めて切り出す。
「ねえ、隼ちゃんは奥さんと別れるつもりはないの?」
隼平は薄暗い天井を見上げて考えをめぐらせ、しばらくしてから美琴の目をじっと見つめる。そのあいだの沈黙が美琴にはもどかしい。別れるつもりなんてない。隼平にそう切り出されないかと。
「そうだな。俺だっていつか美琴と一緒になれればいいなって思ってるさ。俺のところは夫婦としての関係も冷え切ってるからね。だから近いうちに離婚できれば、そのときは二人でで幸せになろう」
嘘。とっさに美琴は隼平の嘘を見抜いた。この人は奥さんと別れるつもりなんてこれっぽっちもないのは知ってる。
でも、今はどうしようもなく隼平に愛されたいし、抱きしめられたい。美琴は隼平の腕の中に体をすり寄せていく。単なる不倫以上のものを求めるように。
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