09.流れ星が願いを叶える

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09.流れ星が願いを叶える

「いろいろあったけど、やっと二人で一緒になれたね。これからもよろしく。二人で一緒に幸せになろう」  佳菜が光太郎にそう言って、二人はワイングラスで乾杯する。小さな流れ星が願いを叶えるときのような音が響いた。 「僕たちも離婚できたし、君の元夫からの慰謝料も入ったし、これでようやく再出発だね。こちらこそ、これからもよろしく」  光太郎の言葉に佳菜は嬉しそうにうなずき、光太郎の瞳を見つめる。瞳の中にこぼれ落ちた流れ星のかけらを探すみたいに。 「せっかくのご馳走なんだから、ゆっくり味わおう」  光太郎はそう言って前菜にフォークを伸ばす。  ここは高層ホテルのレストラン。今夜は部屋をとってある。慰謝料が入ったので、少し贅沢な部屋。それは壊れた何かを修復するための部屋であり、欠けてしまった何かを埋めるための部屋であり、二人が一晩中愛し合うための部屋。 「でもまさか私たちが一緒になるなんてね」  佳菜が面白い冗談に笑うときのような表情を浮かべる。 「僕たちも予想外だったけど」  光太郎がうなずく。うっかりガラスのコップを床に落とした人のような戸惑いとともに。でも、その戸惑いの中にも大きな勝利に浸る人の余裕が垣間見えた。
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