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悠斗と夏樹#13
「初めて会った時からずっと悠斗さんの事が好きだった」
夏樹のその言葉に今度は悠斗が驚く番だった。
呆然としている悠斗に夏樹は勘違いしたのか慌てて言葉を繋げた。
「すみません。兄さんに浮気されて挙句の果てに妊娠までされて悠斗さんは傷ついていたのに嬉しかったなんて言って…僕酷い男ですよね…」
悠斗の手を握りながらしゅんと萎れる悠斗の姿はまるで、大型犬の子犬が叱られて耳を垂れて凹んでいるようで思わず笑ってしまう。
「ううん。いいんだ…ずっと好きだったって言われてびっくりしたけど嬉しいんだ。それに勘違いして欲しくないんだけど…愛人が妊娠して傷ついたのは単に自分のプライドが傷ついただけなんだと思う。それにバチがあたったんだと思うんだ。」
「バチ?」
夏樹は顔をあげて悠斗を見て首をかしげた。
このことを言うには勇気がいったが、ここまで来たのだ全て話してしまわないと、と悠斗は口を開いた。
「俺、春樹さんとの生活は面倒くさくなくて都合が良かったから自分から状況を変えようとか一切してこなかったんだ。」
「最初のヒートで春樹さんが部屋に一切近付いてこなくて何も起こらなかった時も何も言わなかったし、次のヒートが来た時も部屋から一歩も出ずに自分から何も行動をおこさなかったし。夫夫というか単なる同居人みたいな関係で2年間も暮らしてても『面倒くさくなくていい』って思ってて、多分春樹さんが浮気しなかったら何年でも何十年でもあのままだったと思う。それなのに春樹さんが男のオメガを妊娠させたら勝手にプライドが傷ついて…ほんと勝手だよね俺」
そう言った悠斗の手をしっかりと握りながら夏樹は言う
「いいえ…正式な夫夫のオメガが発情期を向かえたのに手を出さないアルファが悪いんですよ。でも僕にとっては幸運でした。悠斗さんと番になれて、その上赤ちゃんまで…悠斗さん僕と結婚してくれてありがとうございます。」
「俺のほうこそありがとう。」
再び悠斗の頬を伝った涙は喜びの涙だった。
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