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悠斗と夏樹#15
出産予定日を過ぎても一向に産気付かない事にやきもきながら過ごしていた夏樹と悠斗は「大事な話があるから」と夏樹の実家に呼び出されていた。
「まったく、いつ産まれるか解らない大事な時なのに呼び出すなんて…」
「まぁまぁ、予定日を過ぎてるのに赤ちゃんが降りてこないから、少し動いた方がいいって先生も言ってたし」
「でもうちの父親はデリカシーの無い人ですから、悠斗さんに変な事を言わないか心配で…絶対にあの父親に会うのは胎教に良くないと思うんですよね」
そう言いながら出迎えてくれた夏樹の母親と一緒に居間へ入ろうとすると興奮した夏樹の父親の声が聞こえてきた。
「離婚しないだと!どうゆう事なんだそれは!?」
二人が顔を見合わせ中に入ると、そこには春樹とその妻であるオメガの正人と、正人の産んだ子供がいた。
「言葉の通りです。正人とは離婚せず番になりました。正樹、産まれた子は俺の子供として育てます」
春樹の言葉に春樹の父親は呆然としてる。
「そのオメガはお前をだまして他のアルファの子供をお前に押し付けようとしたんだぞ!」
そして正人の方を向き怒鳴った。
「お前はまた自分に都合のいい嘘をついて春樹を騙したのか!?」
「やめてください!」
そう言って春樹は正人を自分の背に庇った。
「僕の妻に怒鳴らないで下さい。これば正人から全てを聞いて話し合い、俺が自分で決めたことです。」
「確かに正人は僕を騙しました。正樹も僕の本当の子ではありませんでした。でも正人と結婚して正樹が正人のお腹の中にいて暮らしていた時は、俺は本当に幸せだったんです。」
「それはお腹の中の子が自分の子だと思っていたからだろう。」
「そうですが、でもお腹の中にいた正樹が俺の話しかけた声に反応してお腹をなでる俺の手を蹴った時の事や、正樹が産まれてきた時の産声を聞いた時の喜びを忘れる事ができないんです。たとえ血はつながっていなくても正樹は俺の子供です」
「勘当だ!そんな原黒なオメガを番にしたり、どこの馬の骨のアルファの子かわからないのを息子にするなんて奴は橘家にはいらん!」
「勘当していただいて結構です。もうこの家には近づきません。俺は死んだと思って下さい。」
「春樹おまえ…そんなにしてまで…何故」
春樹の父親は呆然としていた。
まさか息子が自分の家を捨てるとは思っていなかったのだろう。
「正人は俺の“運命の番”ではなかったかもしれません。でも俺にとっては唯一の番です」
春樹は父やの目を真っすぐ見ながらそう言い放った。
「そうでしょうか…」
自分は部外者だと思って口を挟まないようにしていたが、思わず悠斗は口を出してしまった。
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