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悠斗と夏樹#16
「そうでしょうか…」
そう言い出した悠斗にその場にいた全員が視線を向けた。
「俺は…運命の番とかよく分からないですが…“運命”って最終的にたどり着いた結果の事を言うんだと思うんです。」
「たとえ絶対にそうなりたくないと思ってどんなにあがいても、結局そうなってしまったらそれが“運命”だろうし、逆にどんなにそう望んで努力して手をつくしても辿り付けなかったとしたら、それは“運命”じゃなかったんだと思うし…。」
「うまく言えないんですけど、正人さんが他のアルファの子供を身籠っていても春樹さんと番になったのは“運命”だったからだと思うし、俺が春樹さんと結婚していたのに番にならずに、夏樹さんと番になってこの子が俺のお腹の中に来てくれたのも“運命”だったからだと思うんです。」
「“運命の番”だから“番”になるんじゃなくて、“番”になる運命だったから“番”になったんじゃないでしょうか」
「悠斗さん」
夏樹は目をうるうるさせながら悠斗の手を握った。
「僕も悠斗さんと“番になる運命”だったんだと思います!」
なんかちょっと話がずれちゃったなと悠斗が思った瞬間、夏樹の父が叫んだ。
「もう知らん!運命だのなんだの下らん話はワシは知らん!」
そう夏樹の父が叫ぶと今度は夏樹の母親が口を開いた。
「私はお父さんと番になってこの子たちを産んだのは運命だったと思います!」
「かっ母さん!?」
「あなたは私たちは運命だって思わないんですか?」
いきなりの自分の妻の問いかけに父親が動揺を隠せないでいたが、そんな中、悠斗はあることに気が付いた。
「もしかして破水してるかも…このお腹がきゅーってなってるのこれ陣痛なのかな…」
「陣痛だと思います!」
つい数か月前に出産したばかりの正人が答える。
そこからはもうバタバタだった。
動揺する夏樹の運転では危ないからと春樹が運転して病院に向かい(その間夏樹は目を潤ませながら悠斗の手を握っていた)入院したものの、初産だった夏樹の出産は時間がかかり、子供が産まれたのは結局日が明けてからだった。
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