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尚斗と聡#3
「須藤真琴」は“深窓のオメガ”だった。
名門一族に産まれ、オメガと判明してすぐ他の名門一族の跡取りであるアルファと婚約していた。
アルファには一切媚びを売らない、清廉潔白な白百合のような姿から“深窓のオメガ”と呼ばれていたのだ。
尚斗が真琴に目をつけたのも、真琴が一切、尚斗に媚びを売らなかったからである。
尚斗は年若いオメガ達から大層モテていた。
成熟したオメガ達は筋肉質なオスのフェロモンを垂れ流す、男気あふれるアルファに惹かれるものだが、まだ年若いオメガ達にはスラリとしてどこか柔らかく清潔感のある爽やかなフェロモンを出す尚斗が「まるで王子様のよう」と人気だったのだ。
だが真琴はそんな尚斗には目もくれなかったのだ。
そしてもう一つ尚斗が真琴に執着したのは、真琴の婚約者である「鍵山聡」の存在だった。
聡は尚斗と同じく「王子様系アルファ」だったのだ。
学年は尚斗の方が1つ上だが、身長は182センチと聡の方が少し高く、そして家の格も聡の実家の方が高かった。
お互い名門一族出身な為、顔を会わせる機会は少なくなかったが、会えば笑顔で挨拶をし軽い雑談はするが、尚斗は内心で聡の事を「いけ好かないやつ」と思っていたのだ。
そんな“いけ好かない”聡の婚約者を影で寝とる事ができたら…そんな暗い感情が尚斗を進んでは行けない方向へと向かわせていた。
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