処刑

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「蔡詩夏は、昭儀という立場にもかかわらず、(わらわ)に毒を盛ろうとした。これは明らかに主上の治世を脅かす罪じゃ。よって蔡詩夏は死罪。連座としてその父母、兄弟姉妹も全て縛り首がよかろう。異を唱える者はおるか?」  詩夏はきつく唇を噛んだ。全て嘘っぱちだ。  蔡家は政争に敗北した。皇后という立場を超えて(まつりごと)に介入しようとする珠蘭と、吏部尚書を務める父が対立し、そして負けたのだ。  詩夏の罪などでっちあげに過ぎない。詩夏が妃嬪だったからちょうどよかった。それだけだ。  玉座の間の中央に立たされた詩夏の元に、縄を打たれた両親と姉の雪花が連れられてくる。  後宮入りして以来、久しぶりに会った両親はひどく年老いて見えて、詩夏の胸が痛んだ。  ただ姉だけは、最後に別れたときそのままに可憐な容貌を保っていた。当然だ、彼女は大貴族の次男に嫁ぎ、それはそれは大切にされているという話だから。  はらはらと落涙する雪花を、皇帝が舌舐めずりしながら凝視している。それから詩夏に視線を向けてため息をついた。  逃した魚の大きさを嘆いているのだろう、と詩夏にはピンときた。
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