寝室の攻防 其の弐

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「詩夏姐のような死を、この国の誰にも迎えさせない。そのためなら珠蘭の目論見だって乗ってやった。だが、時が経つにつれて、俺も珠蘭のようになってしまう可能性はある。だから……最初の決意を忘れないために、この指輪を作った」  袍の下の指輪を撫でているらしいその横顔に、最後に別れたときの、あの子の面影が重なる。  詩夏は知らず、憂炎の方に手を伸ばしていた。 (ああ、なんだ。こんな簡単なことだったのね) 「……ふ」 「……どうした?」 「いえ、私もつまらないことで悩んでいたと思って」  詩夏の伸ばした手に、躊躇いがちに憂炎の手が重なる。  温かい手のひらだった。  詩夏はそれを支えに、えいっと起き上がった。  驚いたような憂炎の顔を窺って、詩夏は言う。 「草の根分けても連理の姫を探し出すわ。そうしないと私は消えて——憂炎を一人にしてしまうから」  憂炎の瞳が見開かれる。小さく首を傾けて、詩夏ははにかんだ。 「他に、私にできることはある?」 「……ある」  憂炎が掠れた声で言う。 もう片方の手で詩夏の頬を包んで、こつんと額を合わせた。  祈るように目を伏せて、 「この先、何が起きても俺を信じてくれ」 「ええ、もちろん」
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