連理の姫

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連理の姫

 丁香麗が蓮月国の玉座の間に入ったのは、その日が初めてだった。  玉座の間の美しい装飾も、詰めかけた役人や宦官の好奇の視線も、何も気にならなかった。  なぜなら、彼女が気にすべきことはたった一つしかなかったからだ。 「ゆ……主上はご無事なのですか⁉︎」  玉座の間に引き立てられた詩夏が最初に言ったのは、それだった。  辺りに女の高笑いが響き渡る。玉座の隣に据えられた椅子に座る、珠蘭のものだった。 「とんだ女狐がいたものじゃの。自分で主上に毒を盛っておいて、よくもぬけぬけと言えたものよ。可愛い顔をして腹黒い手を使いよる。斬首がお似合いじゃろ」  憂炎が倒れた後、詩夏は皇帝への毒殺容疑で捕縛されたのだった。  反論する間もなく珠蘭の前に引き出されて今に至る。  詩夏は背筋を伸ばし、珠蘭を睨んで声を張り上げた。 「私は毒など盛っておりません!」 「そうかえ。じゃが、そなたの女官が主上の盃に毒を入れたと証言する者がおる」 「なんですって……?」  宦官に連れられて現れたのは、以前翠明宮から追い出した女官二人だった。  彼女らは袖で顔を覆い、よく通る声で口々に言った。 「私たちは香麗様に嫌われてしまいましたけれど、翠明宮の他に行き場もなく、密かに様子を窺っておりましたの」
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