連理の姫

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「あいにくと、俺は幼少期より毒には慣れている。貴様が鈴々に命じて盛らせた毒など甘く感じるほどにな」 「鈴々⁉︎」  声をあげたのは詩夏だ。  見ると、憂炎の背後には鈴々が影のように付き従っている。  その表情は詩夏からは窺えないが、背中は硬く張り詰めていた。 「珠蘭様、あなたは私に命令しましたね。香麗様はお変わりになった。元に戻すために、この薬を盃に入れて飲ませよと」  鈴々が低く言う。  鈴々からは聞いたことのないおどろおどろしい響きに、詩夏はハッと息を呑んだ。 「馬鹿馬鹿しい——私の香麗様はもういないっていうのに!」  鈴々がこちらを振り向いた。  愛らしい顔は泣きそうに歪み、丸い瞳が充血していた。 「香麗様が変わったのは存じております。何が起きたのかなんて、私にはどうでもいい。今の香麗様は昔の香麗様を大切にしてくれるから。……それなのに、あなたは私の主人を二度も奪おうとした! 許せるものか!」  憂炎が言葉を継ぐ。 「珠蘭は元々、丁香麗を殺そうとしていた。万姫を皇后に据え、国母の座から朝廷に君臨するのに、彼女が邪魔だと勘づいたからだ。貴様と万姫が都の工房師に頼んで、手に特殊な焼き印を入れて比翼の印を捏造したこともわかっている」  突きつけられた切っ先の向こうで、珠蘭が悔しげに歯を剥き出した。
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