7、グランシャリオと甘い夜

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「…怖い?」 「ううん、平気です」  彼は目を細めて、変わらずキスを落とし続ける。  その唇が耳や首筋に触れ始めると、ワンピースの裾から熱い指先が太股に触れた。 「っ…」  慣れない感覚に肩が小さく跳ねる。  そんな私を見て、彼は手を止めて再び抱き締めた。 「ごめん。やっぱり攻めすぎた」  本当に幸福感で満たされていて、やめてほしくないと思ってしまうのに、身体は未知の世界に怯えて過敏に反応してしまう。 「…止めないでください」 「今日は一段と煽るね。…これ以上は自制が利かなくなるよ」  口調は優しいのに声色は鋭くて、そのアンバランスさすら色気が溢れていて、媚薬みたいだ。 「そうなって欲しいんです」 「…だめだよ。きっと、俺に流されてるだけだから」 「…どうして?」  突然冷えた声が言葉を耳に届けると、理解する頃には、冷たい雨に打たれているかのように身体が冷えて震えそうになる。 「優希ちゃんは優しいから、俺に流されてるだけじゃないのかなって」  私から離れてベッドの端に腰をかける彼が、切なそうに笑う。 「なんで、突然…?」  彼を追うように起き上がり、私は震える心を抱き締めながら問いかけた。 「君が欲しいから俺は貪欲に求めるけど、双方の気持ちにずれがあれば…、それは意味がない」 「…気持ちのずれを、私に感じますか?」  無言なのは、図星だからだろうか。  知らなかった、自分がこれ程までに彼を傷つけていたなんて。今まで自分自身のことで精一杯で、全くこの人を見れていなかったのだろう。 「ごめんなさい、私…、そんな…」    弁解したいのに、何をどう伝えて良いかわからなくて、言葉が詰まって苦しくて涙が出そうになる。 「…いや、ごめん。大人げなかったね、俺」 「私がちゃんと…、言わなかったから…」  言わなくても伝わっていると、勝手に思い込んでいた。今改めて、逃げてばかりで人と関わってこなかったことを悔やむ。 「優希ちゃん、無理しなくて良いよ」  スカートの裾を握りしめて俯いた私に、こんな時まで優しく声をかけてくれるけれど、それはむしろ切ない。 「…、翼さん」 「ん?」 「わ、私、とっくに…、好きです」 「え」 「い、今更、遅いって思うかも知れないですけど…、ちゃんと、なつ、翼さんに恋してますっ。これは間違いないです!だから、…嫌とか無理矢理とかじゃなくて…」  何が言いたいのかわからなくなって、混乱しながら湧き出てくる言葉を広い集めて束ねていく。
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