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「さぁ、思いきりいくわよ!あまり時間もないしねっ」
「あ、あ、わ、私…、や、やっぱり」
「何今更言ってるのよ、女に二言はないわ!腹をくくりなさい!」
「ひぇっ…!」
「まずはこれに着替えて、次にここへ座ってね」
「は、は、はいっ」
ただでさえ初対面の人とは打ち解けられないのに、こんなにズバズバ物を言う人とは絶対に無理だ。今日のパーティーだって、上手くいくはずがない。
だが惜しくも、この長文を言える能力は自分に兼ね備わっていないので、ひたすら二つ返事で従った。
「よしっ、出来た!妹ちゃん、見てごらん」
その言葉で意識を引き寄せ鏡を見てみる。だが、メガネがないのでぼんやりとしか見えない。
「あの、よく見えない…です」
「あー、そっか。じゃぁ、コンタクト入れよ」
「こ、こ、コンタクトっ!?」
あの世紀末的な恐ろしい物を入れられるなんて、今日で私の人生が終わるに違いない。
「さぁ、目を開けてね」
「ひぃぃぃっ!」
「大丈夫、力抜いて。あっ、あれ何?」
「へ?」
指を差す方へ視線を向ければ、その隙に右目が見えるようになった。
「あ、あれ?」
「こっちは毎日美容に携わってるのよ?こんなの朝飯前。わかったら怖がらずに左目を開けて」
「…は、はい」
言われるがままにすれば、想像よりはるかに違和感なく視界がクリアになった。そして鏡に写る自分を見て、言葉を失う。
「こ、これ…、私?」
「お姉ちゃんによく似てる。磨けば光るってこのことね」
「馬子にも衣装じゃなくて…ですか?」
「違うわ、光る原石。あなたは今、磨かれたダイヤモンドね」
「ダイアモンド…」
白のシフォンワンピースに身を包んだ私は、ウエーブの髪をハーフアップに結い、非常に大人っぽい。
目蓋の上にはラメが光り、頬はうっすらと淡く色づいていて、おまけに唇は赤くぽってりと熟れた果実のようだ。
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