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一体どのくらいの人にそうしたのだろう。
電波が走る音が会場に響き渡ると、ステージ上に上品でグラマラスな女性がマイクを握って立っていた。
その場にいる全員が、一瞬で話を止めて真っ直ぐにその人物を見つめている。
「あ、あの、あの人って」
「女優の三上日向よ」
「…ですよね。すご…」
先ほどからやたらとテレビや雑誌で見たことがある人を拝見する。
一体、このパーティーはどうなっているのだ。
『本日はプラチナ社創刊三十周年記念という、大切な一日にお招きいただき感謝申し上げます。私が初めて芸能界で頂いたお仕事が、プラチナ社の女性雑誌のモデルでした。あれから十五年、今も変わらず美を追求することの喜びを得られているのは皆様のお陰です。本日は誠におめでとうございます。それでは、乾杯』
「「乾杯っ!!!」」
彼女の艶っぽく眩しい姿に見とれていれば、辺りからグラス同士がぶつかる軽やかな音が耳に響いて驚く。
「ほら、乾杯」
「あ、は、はいっ」
慌てて早紀さんとグラスを合わせれば、カツンと鈍い音が鳴って、彼女は苦笑いを浮かべた。
「すみません…、いただきます」
スパークリングワインを一口飲めば、青リンゴの爽やかな香りが鼻を抜けて非常に美味しい。慣れないことをして喉が渇いていたのもあり、一気に飲み干してしまった。
「もっとゆっくり飲まないと、すぐに酔い回るわよ」
「それは大丈夫です。…私ザルなんで」
「ザル?酔わないってこと?」
「あ、はい」
「意外だわ、綾季はすぐに酔うから」
「…そうですね。姉とは…、何もかもが正反対です」
姉はハッキリとした顔立ちで美人な上に、人当たりも柔らかく笑顔も可愛らしい。器用なタイプなのにどことなく隙があって、同姓異性問わず人気者。
「そうかしら、似ているところもあると思うけど」
「…いいんです、よく言われることですから」
「…そっか。あ、じゃぁ、私他にも挨拶してくるから、あとはゆっくり楽しんでね。何かあったら連絡して」
そう言ってメモを渡すと、早紀さんは私の肩を叩いてウィンクをひとつして見せ、颯爽と人混みの中を歩いていった。
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