7、グランシャリオと甘い夜

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 静かな部屋に、自分の鼓動だけが響く。  床に置かれた缶酎ハイが汗をかいている。  窓には星が光っていて、今頃外で茜くんと葵ちゃんは空を見上げているのだろう、などとぼんやり考える。  そんなことを考えるだけの私を、ただひたすらに抱き締めてキスをするのは夏目さん。クーラーが効いていて涼しいのに、私だけ熱くて目眩がしそうになる。 「…っ」  彼の唇が耳に触れてイタズラに弄ぶ。  何度目でも感覚に慣れなくて、硬く目を瞑った矢先、私に触れる彼の唇が離れた。 「…夏目さん?」  顔を見上げれば、少し困ったように微笑む彼が強く私を抱き締める。そして耳元で自分自身に言い聞かせるように、刹那に呟いた。 「ダメだよな、焦ったら。怖がらせたら、本当に最低だもんな」 「あ、あの」 「そうだ!窓から星見ない?今日は北斗七星が見えると思うから」 「…あ、はい」  途端に弾ける笑顔になって、そう提案を持ちかけた彼に頷けば、私の髪を手櫛で直してくれる。  窓際に歩くと、外には満点の星空が描かれていて、ふと肩の力が抜けた。 「いつだって、星は私に癒しと勇気をくれる」 「…緊張してたよね」 「正直、怖かった」 「…ごめん」  謝るのは誘ってしまった私の方で、大きな身体を小さくして謝る彼に首を横に振る。   「謝るのは私の方です」 「そんなことないよ」 「ううん、私です。私が…焦りました」 「焦る?」 「…夏目さんが葵ちゃんの頭を撫でた時、衝撃が走って、雷に打たれたみたいな…」 「…それは、無意識だった。ごめん」 「謝らないでください。色々勉強になりました。これが嫉妬心なんだって初めて知って、それと同時に、友達の喜びを一緒に喜べない自分に苛立って。だから思っちゃったんです、私」  隣にいる彼を見て、幻滅されるかもしれない怖さと戦いながら口を開いた。 「…もし、夏目さんをもっと近くに感じられたら、そんなことを思わなくなるのかなって…」  思いを口にするのが、こんなにも労力を使うことだなんて知らなかった。でも凄く大変なことだとわかっても、それを止めたいとは思えなくて、人間らしい自分に少しだけ笑えてくる。
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