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「…優希ちゃん」
「…だ、だから…その、っ」
その乱れた花束は、無事に受け取ってもらえることを信じて、もう一度想いを告げようとした時。
「うん、それは知ってるよ」
「…はい?」
待て待て待て待て、ちょっと待て。
「じゃぁ、どうして急に?」
「確認したかっただけ」
このタイミングで、至って真面目に言って退ける。
忘れていたが、この人は物凄く自由人で超絶マイペースだった。
大きく溜め息を吐き、自分は呆れながらその真相を尋ねる。
「…知りたかったことは、確認できましたか?」
「うーん、どうだろう」
そう言いながら、彼は嬉しそうに組んだ両手を私の肩に乗せて、こちらを引き寄せる。
どんなに振り回されて呆れても、この瞳にイタズラに見つめられただけで許してしまうのは、すっかり彼に骨抜きにされているということなのだろうか。
「…もう、何でも聞いてください」
「投げやりだね」
小さく笑いを溢す彼は、楽しげに口の端を持ち上げて問いかけた。
「ここ一ヶ月お預けを喰らってたからさ、目茶苦茶にするけど良いよね?」
「めっ!?」
信じがたい言葉が飛び出し、一人慌てる自分。
そんな私を、変わらず愉快そうに上から眺める夏目さん。
「だって、優希ちゃんは俺が大好きなんだもんね?」
「だ、大好きだなんて言ってません!そ、それに、私初めてなんですよ?」
「じゃぁ、尚更忘れられない夜にしよう。俺以外目に写らないくらいね」
目が笑っていない上に、その台詞は怖すぎる。
「ま、待って」
「怯えなくても大丈夫だよ」
「…それもそうですけど、…本当にここでするんですか?」
顔を近づけてくる彼の口を両手で塞ぎ、自分は先程から気になっていた小さな不安を漏らす。
「まぁ、それは確かに」
「友達がいるのに、ここでってなんか…、お、親がいるのにしてるみたいで…って、自分から招いておいてすみません」
発端を正せば、勢いに任せてここまで来てしまった自分が悪い。だが、気になったら何とかしないと気が済まない性格なため、ムードを壊している自覚はありながらも問いただしてしまう。
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