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「えっと、じゃぁ…、この『ロング…アイ、ランドアイスティー』というもので」
「承知致しました」
聞き慣れず見慣れない名前に言いづらさを覚えるが、名前からして美味しそうなのでオーダーしてみることにする。
相変わらず美しい所作と手捌きで作りあげられるカクテルは、名前よりもずっと深い黒色をしていた。
「一度に飲んでしまうと悪酔いしやすいですので、お時間の許す限りゆっくりとお楽しみください」
「…す、すみません」
さりげなく大人のお酒の飲み方を教えられた気がして、少しだけ恥ずかしくなる。
一口含み、少しだけ口の中で転がしてゆっくりと喉を通せば、コーラと砂糖黍のような甘さが鼻を抜ける。
「…なんか、コーラみたいですね」
「名前から紅茶を想像される方が多いのですが、濃度の高いジンやウォッカにコーラとガムシロップを混ぜ合わせて作っています」
「とても飲みやすいです。私、これ好きです」
お気に入りのカクテルと出会えたことが、本日一番の喜びで嬉しくなる。
「お気に召されたようで良かったです。もしよろしければ、ナッツもお召し上がりください」
「え、あ、注文してないんですが…」
「こちらはサービスになりますので、ご安心ください」
そう答えるお姉さんは、無知の私を笑うわけでもなく変わらず品よく微笑んだ。
「そ、そうなんですか…、ありがとうございます」
カシューナッツを遠慮がちに口へと運び租借すれば、カクテルとの相性の良さに驚く。これはお酒がよく進むわけだ。
結局、ロングアイランドアイスティーも早いスパンで飲み干してしまい、同じものをオーダーした。
「お酒、お強いんですか?」
五杯連続でお願いしたロングアイランドアイスティーを飲み終えると、さすがに心配そうにカウンター越しで尋ねられる。
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